序章7~彫金に導かれし者

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第13話 それぞれの思い

森の中に、ぽつんと丸い湖を見つけた。
湖の真ん中の中島からは、煙が上っているのがみえる。

ダリの背中に乗ったクマのカルマは、ガウディの丸太小屋の前に降り立った。

ちょうど脇のテーブルで、トラのジュエリル姿のガウディが、ワックスを彫っていた。

ガウディはクマのカルマを見ると、

ガウディ
「おおっ!帰ってきたか?」

「スキルマスターの課題はどうじゃった?」

「あの者はNEO-KARMAREYになれる資質は持っていたかい?」

何を言っているのかさっぱりわからない。

クマのカルマ
「?」

無反応な態度を見ると、

ガウディ
「どうしたんじゃ、ユフィリー」

クマのカルマ
「え!?」

自分の姿がクマのジュエリルだということを忘れていた。

クマのカルマ
「ボ、ボクはユフィリーじゃありませんよっ。」

バッジを外してみせた。

元の人間の姿に戻ったカルマを見たガウディは目を丸くした。

ガウディ
「どういうことじゃ!?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

これまでのいきさつをガウディに話して聞かせた。

ガウディ
「ガッハッハ!そうかそうか。そういうことじゃったとは(笑)」

「それならワシも、このままという訳にもいくまい。」

ガウディは、目を閉じると、体がまばゆく光り輝き、みるみる体が大きくなっていった。

白ひげを蓄え、ボサボサの白髪頭にハンチング帽をかぶり、黒縁眼鏡に、口にはパイプをくわえ、首元に壊れたペンダントトップをぶら下げ、裸の上からオーバーオール、その上にベストを羽織った人間の姿となったのだ。

カルマ
「え~っ!?ガウディさん!てっきりあなたもしゃべる動物かと思ってましたよ(笑)」

ガウディ
「なんじゃと。ワシはれっきとした人間じゃよ(笑)」

カルマとガウディが談笑している時、ダリはガウディの首元にぶら下がっている壊れたペンダントトップを凝視していた。

カルマ
「ダリも元に戻ったら?」

ダリ
「えっ!あっ、ああ。」

ダリも人間の姿に戻った。

ガウディは、ダリの姿を見た瞬間、ビックリした面持ちで固まってしまった。

ダリ
「私の顔になにか?」

ガウディ
「いっいや、あまりにも・・・」

ガウディは何かを言いかけたが、すぐにその考えを打ち消すように、

「いやいや、鷹のジュエリルが人間になったもので、ちょっとビックリしたんじゃよ。ガッハッハ」

カルマ
「鷹のジュエリルが人間になるのは珍しいことなのですか?」

ガウディ
「まあな」

「まあその話はまた別の機会に話すとしよう。」

「それよりも、カルマよ!」

「なぜ、そなたがこの世界に導かれてきたか、話さねばならんな。」

「実はな、ワシはそなたが暮らしている人間の世界から、NEO-KARMAREYとなれる逸材を探しているんじゃ。

ユフィリーはな、彫金アカデミアの生徒でな。
その生徒たちに、クリエイターになりたい者をここに連れてきてもらっているのじゃ。

スキルマスターは、将来、弟子を持つことになる。

そのための準備として、スキルマスターを目指す生徒は、クリエイターとなれる逸材を見抜くという課題を課せられるんじゃ。

行動を共にしながら、その者の内に秘めたやる気や使命感を呼び起こす手助けをするのじゃよ。

それが、” スキルマスターの課題 ”じゃ。」

「逸材か~」

カルマはつぶやいた。

ガウディ
「ところで、ダリくんじゃったかな。噂では聞いていたが、王子は元気にしているか?」

ダリ
「昔、父がお世話になったそうで。」

ガウディ
「もう30年以上は会っとらんな。」

カルマ
「えっ!ダリは王家の方だったの!?」

ガウディ
「ダリの父” フィガロ ”は、昔、ワシが暮らしていた国の王子だった人じゃよ。」

ダリ
「その頃の父は知りません。今は、プランハーツの長です。」

カルマ
「へえ」

ガウディ
「ダリくんは、あやつというよりは、お母さん似なのかな?」

ダリ
「母の顔は、よく覚えていないので分かりません。」

ガウディ
「そうじゃったか。野暮なことを聞いてしまったかな。」

ダリ
「いえいえ」

ガウディ
「それで・・今日、ワシのところに戻ってきたっていうのは、スキルの御珠の続きが欲しいと言うことじゃな。」

カルマ
「そうなんです。」

ガウディ
「ワシ自身が続きものだってことをすっかり忘れとったよ(笑)」

「続きはこれじゃ。」

ガウディはカルマにスキルの御珠を渡した。

 

スキルの御珠を手に入れた!

ワックスで作る指輪制作の流れとその必要工具が映像化されている珠である。


この映像では一部、音が流れます。音量を確認してからご視聴ください。

ガウディ
「それで、これを使ってどんな企画を立てるのじゃ。」
「良ければ、ワシも知恵を貸すぞ。」

カルマ
「本当ですか!」

カルマたちは、ガウディの小屋に一晩お世話になることにした。

 

14話 記憶の断片

暗闇の奥から、声が聞こえてきた。

「ほら、早く粉を削り出せ!」

石壁に炎の明かりに照らされた2つの影。
ひとりは甲冑をまとった者で、もうひとりは女性らしい。

ガリリッと何かが削れる音と共に、女性のうめく声が聞こえ、壁に写ったメラメラと揺れ動く炎が、辺りをだんだんと覆い尽くしたかと思うと、今度は、喧騒の渦中にいた。

怒声やうめき声や逃げ惑う声があちこちから聞こえ、金属がぶつかり合う音と、甲冑の擦れる音が入り乱れている。

大勢の足音が、だんだんとこちらに近づいてくる。

自分の名前を呼ぶ声がした。

「◯◯!!しっかりしなさい!」

確かに私に向かって叫んでいる。

「はやく、これを付けて逃げるのよ!!」

目の前がパアッとまばゆく光り輝いたかと思うと、次に目を開けたときには、大空を飛んでいた。

ダリは、ハッと目を覚ました。

隣で、カルマが気持ちよさそうに眠っていた。

窓の外から月の明かりが差込み、どこかで虫の音が鳴いている。

ダリは外に出ると、湖の湖畔の前に立ち、月を眺めていた。

また、同じ夢を見た。

後ろから足音が聞こえた。
振り向くと、ガウディが立っていた。

ガウディ
「一服しにな。」

そう言うと、近くにあった丸太を椅子代わりに腰掛け、パイプに火をつけた。

ダリも、その隣に座った。

ガウディ
「なぜ、そなたはジュエリルリングの作り方が知りたいんじゃ?」

ダリ
「なぜでしょう?私にも分かりません。」

「でも、心の奥底で、誰かが知っておかなければいけないっと私に訴えかけてくる感覚になるのです。」

ガウディは、ゆっくりとパイプを吸って、煙を吐き出した。

ガウディ
「ドリームハーフの言い伝えは知っているかのう?」

ダリ
「カルマレイ族が、動物たちをジュエリルに変えて、ジュエリルワールドに逃したっていう話ですよね。」

ガウディは湖畔をじっと眺めていた。

ガウディ
「ちょうど、そなたぐらいの年の若者だろうな。」

その若者が住んでいた頃の世界は、人口が増え過ぎて、住める場所が手狭になってきてしまったのじゃ。

国々は領土をめぐり、人間同士の争いが絶えなかった。

とある王国では、王の命により、領土開拓と侵略のために新天地を探し求めるために、兵を招集した。

その若者は、その兵団の一員となったのじゃ。

しかし、侵攻の途中、嵐に遭い、兵団の船は難破してしまうのじゃよ。

・・・・・

運良くその若者だけが、ある孤島に流れ着き、そこで暮らしている種族の末裔に助けられることとなるのじゃ。

彼らは外界との繋がりを一切持たない種族だった。

なぜなら、彼らには特殊な能力があったからじゃ。
命を宿すアクセサリーに変身することができるというな。

その変身した姿は知っておるじゃろう。

” ジュエリル ”じゃよ。

その種族は、” パーフェクトジュエリル ”となれる

そう!

” カルマレイ族の末裔 ”だったのじゃ。

彼らは、ジュエリルになることで、先祖が作ったというジュエリルワールドという世界を行き来していたんじゃ。

その孤島には、その世界の入口があったのじゃ。

そして、そのカルマレイ族の末裔たちも、その秘密を代々守り続けていたのじゃ。

若者は、そこで暮らすこととなり、彼らもやがて、その若者を種族の一人として、迎え入れるようになっていったのじゃ。

そしてその若者は、共に暮らすうちに、カルマレイの族長の娘に惹かれ、彼女もまたそれを受け入れていくのじゃった。

二人は恋におちて、そして、実を結ぶことになったんじゃ。

晴れて正式なカルマレイの一族となった若者には、ジュエリルに変身できる指輪を授けられた。

そなたも持っている「ジュエリルリング」じゃよ。

はるか昔、 カルマレイの祖先が、共存共栄を望む生き物たちを助けるために作ったとされる、
命が宿るアクセサリーに変身できるという指輪じゃ。

これで、若者も自由にジュエリルワールドに入れることができるようになったのじゃな。

若者はその世界に入っては、彫金の知識と技術の叡智が刻まれたスキルのかけらを見つけ出し、アクセサリー作りの腕を磨いたのだった。

しかし、その若者が、このジュエリルリングを持ってしまったばかりに、悲劇が訪れ、この世界の秩序が崩れていくことになるんじゃよ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

ガウディ
「ふああ~、今日は久しぶりに随分とおしゃべりしたのう。」

「さてと、」

ガウディは立ち上がり、小屋に戻ろうとした。

ダリ
「その若者の悲劇とは何ですか!?」

ガウディ
「それは、また機会があったら、教えることにしよう。」

 

今までのストーリー
序章0~彫金に導かれし者

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