序章8~彫金に導かれし者

第16話 オークション

舞台を丸く囲むように階段状の席が並び、その席を埋め尽くさんばかりの人たちが、中心の舞台を注目していた。

会場は異様な熱気に包まれている。
会場のあちこちから大声が上がっていた。

客たち
「500!」「1000!」「1500だ!」

コンコン~

ハンマーが2回鳴り、オークショニアの声が会場内に響く

オークショニア
「糸鋸のスキルのかけら、1500ニューロで落札!」

「続いて、自作集塵ボックスの書です」
「3000ニューロから!」

会場が一斉にざわつき出す。

客たち
「3500よ!」「5000じゃ!」 「8000!」

ナリトは、その場の空気に圧倒されそうになった。

ダリ
「この次が、いよいよ私たちが狙う粉だよ」
ナリト
「ですね!」
ダリ
「その前にここで競ってもらわないと」

オークションはどんどんと熱気を帯びていく。

客たち
「10000だ!」「15000でどうだ!」

ダリ
「16000!」

ナリト
「えっ!?」
ダリの突然の参加に驚くナリト。

ダリ
「(独り言のように)乗ってこい」

女性の客
「18000」

ダリ
「きたっ!」
「この声?・・」

客A
「18500だ!」
客B
「19000!!」

ダリ
「(独り言のように)まだだ、もっと競れ」
「20000!」
客A
「エイっ!21000!」

女性の客
「25000」

ダリ
「まさか!?」

会場
「おおお~」
ナリト
「お~」

客A
「これでどうだ!30000!」
女性の客
「(間髪入れずに)50000」

ダリ
「やはり、アリ・・」
ダリの声がかき消されるほどのどよめきが起こった。

オークショニア
「50000ニューロ出ました~!!」

「他にいませんか?」

辺りは静まり返っている。

コンコン~

オークショニア
「自作集塵ボックスの書、50000ニューロで落札!」

ナリト
「いよいよですね」

ダリの表情は険しかった。

オークショニア
「さあ、本日最後の目玉、パーフェクトジュエリルの粉です」

「それでは、50000ニューロからスター」

女性の客
「ホ~ッ、ホホホホ」

オークショニアの開始の合図に被せるかのように、会場に高らかに響き渡る笑い声

女性の客
「ホ~ホホホホッ、1000000よ

・・・・・

会場全体、そしてオークショニアでさえが、この突然の状況を理解するのに時間がかかった。

オークショニア
「ひゃっ、1000000ニューロ?が、出ましたぁっ!!」

会場が一斉にどよめいた。

ダリ
「やはり、あいつだったか」

オークショニア
「さあ、ほかにいませんか!」

会場はシ~ンとしている。

ナリトたちも為す術がない金額だった。

オークショニア
「ほかにいなければここで落札とします!」

「いませんね」

コンコンッ~!!

落札の合図が会場に高らかに鳴り響いた。

ダリ
「くそっ」

~~~~~~~~~~~~~~

オークションは終わり、ゾロゾロと会場を後にしていく人々の姿

会場にはまだ、ナリトたちがいた。

女性の客
「やっぱりダリだったのね~、久しぶりね」

ナリトたちの後ろから声が聞こえた。

ダリ
「やはり粉はオマエか、アリス」

そこには、ゴスロリ衣装に身を包み、桜色のパラソルを差して、モデルポーズを決めながらニコニコとこちらに微笑みかけている女性が立っていた。

アリス
「なんか、目つきこわいよ~」

ダリ
「誰のせいだ」

可愛らしくペロッと舌を出したアリスは、ナリトに目をやると、

アリス
「あらま、可愛い子ね」

「はじめまして」

ナリト
「ど、どうも」

アリス
「ダリとはどういう仲かな~?」

満面の笑みで近づいてきた。

ナリト
「えっ!?どういうって、その~」

アリス
「私の未来のダーリンだからね」

ナリトの横に立ち、耳元でドスを利かせて

「・・・ちょっかい出したらブっ殺すわよ!」

その豹変ぶりに思わず、

ナリト
「はっ、はい」

ビビって答えてしまったナリト。

アリス
「よしよし、いい子ちゃんにはこれをあげるわ」

ナリトの手を取ると、微笑みながらスキルのかけらを手のひらに乗せた。

ナリト
「いや、こんなものいただけまっ」

アリスの無表情の顔を見て、

ナリト
「あ、ありがとうございます」

やれやれまたかという感じに、ダリは二人のやりとりを見ていた。

 

アリスからの贈り物

スキルのかけらを手に入れた!

バフがけなどの研磨カスや塵などの飛散を防止するためのボックスの作り方の知識が刻まれた叡智である。

プロ仕様の集塵ボックスの作り方

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アリス
「さあて、粉も手に入れたし、パパに早くこれ渡してシャワー浴びないと、私干からびちゃうわ。」

「それじゃあ、そういうことで、チャオ!」

アリスはオークション会場を颯爽と出ていった。

ナリト
「お知り合いだったんですか?」

ダリ
「アイツは、私の父の弟子だよ。
孤児だった私たち二人を父が引き取って、育ててくれたのさ。

アイツは今や、スキルハンターとなり、ジュエリルワールドでスキルのかけらを探し回っているのさ。」

「キミには言ってなかったね。」

「フィガロは、私の実の父ではない。」

「しかし、実の父のように、私たちをここまで育ててくれた。」

「彼のおかげで今や私は、ジュエリルワールド調査団の副隊長になった。」

「そしてアイツは、裏側のモノたちを束ねるリーダー的存在。味方であり、敵でもある、スキルハンターを束ねるドン、氷の女帝” アリス ”だ。」

ダリ
「ふりだしに戻ってしまったな。これからどうする?」

ナリト
「う~ん、一旦、レオナルドの所に戻ることにします。またなにか手がかりを教えてくれるかもしれないので。」

ダリ
「わかった。私もアリスに粉を分けてもらえないか、聞いてみることにする。」

「ここで一旦別れることにしよう。」

 

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