それホントに覆輪留め?あなたのリングは宝飾品と呼べるのか!

昔も今も女性に人気の覆輪留めのリングやペンダント。宝石を引き立たせてくれる可愛らしいぷっくりとした丸みのあるデザインが人気のヒミツかもしれません。

でも、あなたが持っっている覆輪留めのリングやペンダントって、それ本当に覆輪留めと呼ばれるアクセサリーなんでしょうか?

もしかしたら、宝飾品じゃなくて、雑貨品と呼ばれるものかも知れませんよ。

今回はそんな覆輪留めについての正しい知識をお話します。

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ホントの覆輪留めとは?

覆輪留めは、覆う輪っかと書いて、”フクリン”と呼ぶ人気の石留め方法のひとつです。

海外では、Bezel Setting(ベゼルセッティング)と呼ばれています。

よく雑貨屋さんなどでも覆輪デザインのアクセサリーを見かけますが、じつはアレ、ほとんどのものは本当の覆輪留めとは言わないんですよね。

アレは覆輪留め風のアクセサリーです。

「えっ!どこが違うの?」と、思いますが、違いはひとつ。

 

ホントの覆輪留めは、接着剤やUVレジンを使わずに宝石を留めています!!

 

なぜ使わないのかって?

それは、宝石が可哀想でしょ。
せっかくあたなと巡り合ったのに、飽きたらポイっと捨てられちゃうんですから。

えっ?言ってる意味が分からないですか。

本物の宝石を使っているのであれば、今の覆輪デザインが飽きた時にはその宝石を使って違うデザインにリフォーム出来るんですよね。

だから、価値のある宝石にベタベタと接着剤やUVレジンを使うなんてことは、宝飾品として有り得ない行為ってことです。

裏を返せば、覆輪留めが接着剤やUVレジンで接着されている宝石ってことは、価値がないクズ石を使っている可能性大のアクセサリーだと言っているようなものです。

そりゃ、飽きたらポイしちゃいますよね。
石留めのコスト削減をはかった安価なカジュアルアクセサリーなんですから。

もしくは最近では、誰でも手作りのアクセサリーを手軽に販売できるので、覆輪の正しい留め方を知らない作家さんなどが作ったものということも考えられます。

ちなみにどうしても接着剤を使わなければならないものもあります。

それは、真珠(パール)のリングやペンダント・ピアスです。

あれは石の形が丸いから、パールの底に穴を開けて、棒に挿し込んで接着剤ではずれないように補強して留めるんです。

 

話を戻しますが、本来の覆輪留めはすべて地金を伏せて留めていきます。

もっと詳しく説明すると、
まずは宝石がスッポリとおさまる大きさの円筒状の地金パーツを想像してみてください。

そこに宝石をおさめたら、宝石の周りからはみ出した覆輪のフチ部分の地金を倒して、宝石の周りを囲うように伏せこんで留めていきます。

これが本来の覆輪留めです。

だから、「伏せこみ」とも言われるんですよね。

 

代表的な覆輪留めアクセサリー

それではいくつか覆輪留めの代表的なアクセサリーデザインを見てみましょう。

ファセットカットの石を覆輪留めしたもの

ファセットカットとは、宝石の表面をファセットと呼ばれる平面でいくつも区分してカットして、石の持っている輝きを最大限に引き出すために編み出されたカットの方法。
ダイヤモンドはほぼこのカットです。

カボションカットの石を覆輪留めしたもの

宝石の表面は丸く底は平面と、ドームのような形に研磨したカットの方法。
ファセットとはまた違ったやさしい輝きを放ち、スターサファイヤのように中には石を光に当てると六条の光を生ずる珍しい石もあります。

覆輪部分にデザインを施したもの

丸い粒が連続で並んだミル打ちデザインの覆輪留めです。
アンティークジュエリーによく使われています。

覆輪のフチをギザギザ模様にした覆輪留めです。
インディアンジュエリーでよく見かけるデザインです。

覆輪全体を立体的にした覆輪留めです。
デザイン性と共に石の輝きを取り込めるデザインになります。

 

覆輪留めの特徴と3つのデザインパターン

石留めは大きく3つのジャンル「爪留め」「彫り留め」「その他の石留め」に分かれています。

その3つの中の「その他の石留め」に覆輪留めは入るんですが、デザインがツルっとしてシンプルかつ可愛らしく、留めた宝石が違和感なくデザインに溶け込み、一体感のあるイメージに見えるの特徴なんですね。

しかも、爪留めや彫り留めに比べ、衣服に引っかかる心配もない。

そんな覆輪デザインには、基本3つのデザインパターンがあるんです。

円筒状の覆輪デザイン

シンプルな覆輪デザインとしてよく使われるデザインです。
小さめの石に使うと、可愛らしい雰囲気のデザインに仕上がる。

逆に大きめのファッセットカットに留めると、覆輪側面が壁のようになり、野暮ったく見えてしまう。

だから、石が大きくても覆輪側面の壁があまり高くならないですむカボションカットに用いられているものが多い。

さらにこのタイプのリングは、覆輪が重くなりがちで指輪が回ってしまいます。

透明な宝石を使うと石を通して底板の金属部分がぼやけて透けて見えるのだが、長い間使用していくうちに底に汚れが溜まり宝石の輝きが鈍ってしまうのだ。

透かしが入った覆輪デザイン

覆輪に透かしを施すことで、見た目を良くするとともに、野暮ったさを隠してくれる効果がある。

重さも軽くなるので、指輪が遊ばなくなる。

金属ではなく、宝石の輝きを側面からも魅せたい時に効果的なデザインです。

底が空洞になった覆輪デザイン

金属の重さを軽くするとともに、底からの光を取り入れたい時に使うデザイン。

透明の宝石を使う場合によく使われるデザインです。

底を空洞、側面を透かしデザインにすることで、最大限に重さを軽くすることができるのだ。

 

ダイヤの覆輪留めは勿体無い!?

婚約指輪や結婚指輪などのダイヤのリングに、覆輪デザインのものを選ぶのは勿体無い話なんですよね。

なぜかって、男性諸君に聞きます!

少しでも大きいダイヤが付いた婚約指輪を彼女にプレゼントしてあげたくありませんか?

ダイヤは少しでも大きいものの方が良いですよね、この時ばかりは。
これから妻となる彼女に捧げる愛情の大きさのバロメーターになるものなんですから。

例えば、同じ0.3カラット(約4.3mm)の大きさのダイヤが、
通常よく使われる爪留めデザインならば、見たままの大きさに見えるところ、
覆輪留めにしてしまうとダイヤのフチが隠れてしまって、約4.0mmぐらいの一回り小さく見えるデザインになってしまうのです。

これって、やっぱり婚約指輪や結婚指輪で使うには、あまりにも勿体無く感じませんかね。

定番と言われようが、バーンと光り輝く爪留めのダイヤをプレゼントしたほうが良いと思いますけどね。

まあ、彼女がどうしても覆輪デザインのリングが良いっていうのなら話は別ですけどね。

 

お手入れ方法

普段のお手入れ方法は、メガネ拭きなどの柔らかい布で汗や汚れなどを拭き取ればOKです。

もし、覆輪の輝きを取り戻したい、小キズを消したいならば、こちらの石ありのお手入れ方法を参考にしてみてください。

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やり方は基本一緒ですが、覆輪に付いている宝石部分を紙製の貼って剥がせるテープや包帯を止めるサージカルテープなどで保護して、覆輪のフチ部分を磨いていきます。

水に強く、クラックやインクルージョンが少ない石ならば、超音波洗浄機で洗ってあげるのもありですね。

 

覆輪留めリングの作り方

覆輪留めの作り方には2種類あります。

  • 地金(シルバーやゴールド、プラチナなど)の金属板から覆輪パーツを作り出す方法
  • ワックスで覆輪パーツを作り、鋳造する方法

地金で作る覆輪留めリングの作り方の流れ

シルバーの地金を使って、覆輪のフリーデザインリングの作り方を紹介します。

どんな風に作業が進んでいくのか、おおまかな工程を知ることはできるはずだ!

今回は、ブルートパーズのカボションカットの石を使った覆輪留めリングを作ります。

まずは覆輪作りから。

石の外径より少し大きめのフクリンが出来るような長さで、シルバーの地金を糸鋸でカットします。

カットした地金を丸めて繋ぎ目をロウ付けする。

金属同士の接合には、基本その素材に近い金属をつなぎ目に溶かし込んでくっつけていくのだ。

覆輪の大きさは、石の外径が枠に触れない丁度よい大きさになるようする。

次に、底板となる地金をロウ付けする。

底板と覆輪の間がしっかりと隙間なくロウ材が流れるようにロウ付けしていきます。

ロウ付けしたら、はみ出ている底板部分の地金を、枠に沿って糸鋸でカットしていきます。

今回は、底板に丸く光穴を入れてみた。

光穴とは、宝石に光を入れて輝いて見せるための穴である。

まあ、実は商品価値を上げるため以外にも、商売としての理由で光穴を開けたりする。
ヒントは、作り手側の視点で考えてみて、”安く良いモノ”。

ではでは、あらかじめ作っておいたフリーリングと覆輪をロウ付けするよ。

リングの丸みに沿った角度にロウ付けできるように慎重に作業しよう。

ロウ付けが出来たら、覆輪以外の周りを仕上げ研磨して、いよいよ覆輪留めのやり方となる。

 

覆輪留めで使う道具ってなにが必要?

覆輪アクセサリーが出来たらいよいよ石留めに入りますが、まずはその前の準備として覆輪留めで使う道具たちを揃えておきます。

これから紹介する道具を用意してもらえば、覆輪用のタガネのカスタマイズから、ファセットカットやカボションカットのそれぞれのカットによる石留め方法や、◯や□や♡などのカタチに合わせた留め方、フクリン枠のデザインなど、覆輪留めに関するスキルがマスターできます。

覆輪留めがマスターできれば、リングやピアス、ペンダントトップなど、すべてのアクセサリーデザインに取り入れることができるようになるのです。

デザインの幅もぐんと広がりますよね。

覆輪(フクリン)留めで使う7つの道具

回転バイス 必須道具

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こいつにアクセサリーパーツを固定させて、研磨や石留め・デザイン彫りをしていくための地金固定補助工具。
地金を安定させつつ、両手を使わないといけない作業に重宝する。
360°回転はもちろんのこと、90°にも倒せるマルチアングルバイスを手に入れよう。

ゆくゆくはタガネを使った彫り技法を本格的にやっていきたいって方は、思い切って「彫刻台」を手に入れてしまうのもありです。

青タガネ(ハイス) 必須道具

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材質は高速度鋼(ハイスピードスチール・・・略して”ハイス”と呼ばれています)で出来ているため、赤タガネ(炭素鋼)でおこなうような焼き入れや焼き戻しは必要ありません。

粘りが強く切削性に優れているので、彫り用のタガネとして使うのが一般的ですね。

面の形は、片切り(長方形のかたち)と毛彫り (四角形のかたち)の2種類があり、留める石の大きさに合わせて使い分けます。

それぞれに面の大きさが分かれています。(1・2・3・4・5号・・・数字が上がるほど大きい)

覆輪用のタガネとして使う場合には、打面を直角に加工して、おたふく槌で覆輪枠を叩き、石に枠を伏せて留めていきます。

おたふく槌 15φ 必須道具

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タガネを叩くための道具です。
通常はタガネのサイズに合わせて、3分(9mm)/4分(12mm)/5分(15mm)/6分(18mm)/7分(21mm)/8分(24mm)の打面サイズのものを使い分けしますが、まずは打面の大きさと重さのバランスがちょうど良い15mmを用意しておくと良いでしょう。
この打面の大きさで、タガネを正確に当てられるようにすることと重さの感覚に慣れてください。

市販の柄はそのままだと長いのでカットして使用します。
柄の上で手の平をいっぱいに広げた時、小指と親指の幅+4cm程度の位置を糸鋸で切りましょう。
そして、槌付近の柄を削って、打ちやすくカスタマイズしていきます。(講座内で詳しく解説しています。)

爪たおし 覆輪用 必須道具

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爪たおしの先端面を覆輪や爪に当てて、直接柄を持ち、手の力で石留めしていきます。
先端の形状が四角・丸・先広のものは、主に色々なサイズの覆輪用、先割のものは爪用で使用します。

覆輪枠で使用する場合、キズを最小限に抑えて留めることができるので、大きな枠のものなど手の力で伏せられるものは、こいつを使います。
枠の大きさによっては、タガネと併用して留めていきます。

ヒートクレイ 必須道具

地金用

生産中止となったヒートフォームの同等商品がこれです!
60℃の熱で粘土のような軟からさに、そして冷めるとそのカタチのまま硬化します。

石留めなどで、バイスにアクセサリーを挟む時のクッション固定材としてこいつを使います。
ヤニのような独特な臭いやベタつきがなく、劣化するまで何度でも再利用ができる優れものです。

トリプレットルーペ 必須道具

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主に石留めした宝石がしっかりと留まっているか確認するために使います。
歪みがでないレンズを3枚使用したトリプレットの手のひらサイズの拡大鏡です。

倍率は10倍が使いやすく、レンズの大きさは15φ・18φ・21φが手頃サイズかな。
LEDライト付きのものもあります。

ナナコセット(球ぐり工具) 必須道具

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ハンドルとナナコのセット(12本組または23本組があります。)
石留めやミル打ち、ナナコ彫り、半球などの加工に使用します。
ナナコの大きさは、
0/1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22(23本セット)
2/4/6/7/8/9/10/11/12/13/14/16(12本セット)
大きさ毎に単品でも購入でき、ナナコの大きさはNo.0(直径0.25mm)から0.05刻みにNo.22(1.35mm)の大きさまで、計23本となります。

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さて、メンバーさんにはこの道具たちを揃えてもらったら、覆輪留めのやり方を動画で学び、いよいよ自宅で実践です。
どなたでもオンラインで彫金が学べるコミュニティに参加できます!
興味がある方は、まずはこちらの記事を読んでみてくださいね。
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