序章10~彫金に導かれし者

更新日:

第17話 次なる材料へ

森の回廊を抜けると、そこは白い砂浜が広がっていた。

波打ち際まで続いていたパヴェの道は、なんとタートルバックに向かって、真っ直ぐに延びていたのだ。

どうやら、潮が引けて道が現れたようだ。

カルマは海のパヴェ道を進んだ。

パヴェ道は街の中で幾つにも別れ、石作りの建物には、木々が絡みつくように生い茂っていた。

建物には看板が掲げてあるが、どれもさびれていて、店が開いているようには見えなかった。

道を挟むように、さまざまな店が立ち並んでいる。

ある一本の道が、らせん状の坂となって上まで伸びていて、その天辺には大きな屋敷が立っていた。

しばらく街の中を歩いていたが、人とすれ違うことはなく、いるのは、道端や建物や木の上などに寝ている猫だけだった。

「カルマさん、おかえりなさい。」

声が聞こえた方を見ると、そこには、トラ模様の猫の首輪に掴まるように、ユフィリーがちょこんと座っていた。

カルマ
「おおっ!ユフィリー!」

ユフィリー
「どうでしたか?材料は見つかりましたか?」

カルマ
「さざれは手に入れたよ。」

「それよりも、レオナルドさんはどこにいる?」

ユフィリー
「ボクについてきてください。」

そう言うと、トラ模様の猫が、らせん状の坂上に向かって歩き出した。

カルマ
「ここには人は住んでいないのかい?」

ユフィリー
「ここは、職人が住む街、人は住んでいません。」

カルマ
「えっ!?どういう意味?今、職人が住んでいるって。」

ユフィリー
「ここに見知らぬ者が迷い込んできても、誰もしゃべるヤツがいないから、ただの野良猫が住む廃墟に見えるだろうね。」

「ここはそうやって、技術や知識を守ってきた街なんだってさ。」

「ここにいる猫たちが職人さんなんだよ。」

カルマ
「なるほど。そういうことね。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

庭のテラスで丸くなって寝ている黒猫がいた。

ユフィリー
「レオナルドさ~ん、帰ってきましたよ~。」

カルマを見て、

レオナルド
「手に入れましたか?」

カルマ
「” さざれ ”は手に入れました。」

「あと、” パーフェクトジュエリルの粉 ”は、あったのはあったんですが・・・」

レオナルドにオークションまでのいきさつを話した。

レオナルド
「そうか。それは残念だったな。」

カルマ
「でも、見てください。」

カルマはバッジを付け、クマのジュエリルに変身した。

ユフィリーが二人になった。

ユフィリー
「あらま!?」

カルマ
「ジュエリルになることができます。」

レオナルド
「それは彫金アカデミア用に作ったバッジだから、残念だが、 それではジュエリルワールドに入ることは出来ない。」

カルマ
「これも、あなたが作ったのですか?」

レオナルド
「あそこの校長に頼まれてね。」

カルマ
「ジュエリルリングが作れる唯一の鋳造職人なんですってね。」

レオナルド
「そうだ。しかし、もうむやみにリングは作らない。NEO-KARMAREYとしての逸材かどうかを確かめるまではと、ガウディたちと決めたのさ。」

ユフィリー
「レオナルドさん。もしかして、ボクのスキルマスターになるための課題はここで終わってしまうんでしょうか?」

レオナルド
「大丈夫だよ。
本人が知ってしまったところで、キミはキミの課題を最後まで全うすればいい。」

ユフィリー
「本当ですか!ああ、良かった。」

レオナルド
「よし、それでは、粉はちょっと後回しにして、” 奇跡のDNAの一部 ”を先に手に入れるとしようかな。」

「ガウディがいる丸太小屋からさらに西へと、パヴェの回廊を進んでいくと、かつて、カルマレイ族が暮らしていた遺跡が残っている。」

「今はそこに、彼らたちが暮らしているんだ。」

「しかし、キミがいったところで、彼らは相手にはしないだろう。」

「だから、今回は私も同行させてもらうよ。」

 

第18話 遺跡の住人

ジュエリルとなったレオナルドとユフィリーを肩に乗せたカルマは、ガウディの丸太小屋の前にいた。

扉をノックしたが、返事はなかった。

ユフィリー
「いないようですね。」

レオナルド
「どうやら出かけているらしいな。」
「仕方ない、ガウディなしで行くか。」

カルマ
「なぜガウディさんの小屋に寄ったんですか?」

レオナルド
「あやつは、彼らと仲がいいんだよ。」

「この周りを見てみなよ。」

「彼らをここに呼んで、アクセサリーのモデルにしているくらいさ。」

周りには、動物たちのワックス原型やシルバーアクセサリーが散らばっていた。

「あやつは、私たち動物たちの心を掴むのが上手いんだな。」

「まあ、私もその掴まれた一匹だったんだけどな(笑)」

「また今度、ガウディとの冒険談でも、ゆっくりと聞かせてやろう。」

「さて、先を急ぐとしようか。」

舗装されていたパヴェの道が進むにつれて石が剥がれ、そこから草木が生えだし、道はデコボコになっていく。

ようやく、森を抜け出ると、そこは崩れかけた建物があちこちに立ち並ぶ遺跡がある場所だった。

どの遺跡にも蔦が絡まり合って、中には木が生えて自然と同化している建物もあった。

カルマ
「ここにかつてカルマレイ族が住んでいたのか。」

建物の横をなにかが横切った。

ユフィリー
「なにかがボクたちを監視しているような視線を感じるんだけど。」

カルマたちは、奥の寺院らしき遺跡へと向かおうとした時、

「これ以上、ここへ入ってきてはいけない。」
「ここから立ち去れ。ここはお前らが来るところではない。」

完全に回りを包囲されたようだ。

森の茂みから、幾つもの目がこちらを凝視しているのだ。

レオナルドがカルマの肩から飛び降りると、まばゆい光とともに、黒猫へと戻った。

レオナルド
「私もキミたちと同類。しゃべる動物だよ。」

茂みから、一匹の狼が現れた。


「いや、おまえは違う!人間と一緒にいるではないか!」

「人間は我らの宿敵」

レオナルド
「それは本心かい?」


「どういうことだ!?」

レオナルド
「ガウディだよ。」


「あの方は特別だ。」

「なぜ、おまえがあの方を知っているんだ!?」

レオナルド
「私も仲間だからさ」

森の茂みから、様々な動物たちが、ゾロゾロと出てきた。

年老いたキツネが、 カルマの前に近づいてきて、

キツネ
「あの方は今、命の祭壇で、新しい命がやって来るのを見届けてもらっているんだ。」

「わしらの仲間が、生まれそうなんじゃよ。」

「少しここで待っていてくれないかな。」

カルマたちは、待つことにした。

キツネとカルマたちを囲むようにして、動物たちが座ったり、寝転んだりしていた。

キツネ
「あなた方も知っていよう。」

「遠い昔、人間が支配した世界で、人間たちと共に暮らそうと決意した動物たちがいたことは。」

「しかし、その人間のおぞましさを目の当たりにした彼らは、引き返すことも出来ないまま、人間との会話を閉ざし、ひっそりと、怯えながら、生きなければいけなくなった。」

「それでもなんとか動物同士が助け合いながら、生き延びることができていたんだ。」

「しかし、その動物たちも、種族の言葉でしか話さなくなってくると、違う種族同士で権力争いが起きるようになってしまった。」

「強いものが、弱い者を食らって生きていく弱肉強食の世界。」

「絶滅してしまう種族もいたが、それでもなんとか、自然界の秩序は保たれていたんだ。」

「我々はそれで良しとした。」

「既に人間の言葉を忘れる者も出てきていたし、共存共栄の心など、口にする者などいなくなっていたからな。」

「そんなとき、あの方が現れたんだ。」

「我々に忘れかけていた生きる希望を思い出させてくれた。」

「そして、この地にようやく辿り着くことができたんだ。」

「あのガウディという人間は、我々にとっては、神のようなお方なのだよ。」

「だから、あの方が大切にしているこのカルマレイの遺跡を、他のやつらに汚されないよう、我々がお守りしているんだ。」

「生まれたぞ~」

向こうの遺跡から、ガウディの声が聞こえてきた。

 

今までのストーリー
序章0~彫金に導かれし者

第0話 不思議な教本!? 『逸材にはなれそうかな?』 「どうでしょうね?」 『彫金の知識と技術は、覚えることが山ほどあるからね。』 『ついてこれるかな?』 「僕たち次第ってこと?」 『いや、それは本人 ...

続きを見る

序章1~彫金に導かれし者

前回のストーリー 第1話 夢と現実の狭間 ユフィリー 「カルマが今いる場所は、夢と現実をつなぐ島 ” ドリームハーフ ”というところです。」 「ちょうどここは、カルマの住む現実世界とジュエリルワールド ...

続きを見る

序章2~彫金に導かれし者

第2話 隠遁者 丸太小屋の開いた扉から、カルマは外に出た。 するとそこは、360度に湖が広がり、それを囲むようにして森が生い茂っている場所だった。 なんと、湖の真ん中の中地に、小屋が建っていたのだ! ...

続きを見る

序章3~彫金に導かれし者

第4話 呼吸のごとく 辺りが真っ暗闇となって何も見えなくなった森に、スキルのかけらの蒼白い光と、焚き火の炎のオレンジ色の光が、大木を照らし続けている。 夜が更けた。 共鳴の大木の下で、焚き火を囲んで佇 ...

続きを見る

序章4~彫金に導かれし者

第5話 タートルバック カルマたちは、北の森のパヴェ回廊を歩いていた。 だいぶ歩いただろうか。 しばらくすると、森で囲まれた薄暗いパヴェ回廊の先が、次第に明るくなってきた。 どうやら、回廊の出口が近づ ...

続きを見る

序章5~彫金に導かれし者

第8話 それいけ!ユフィリー 阿吽の問題に正解し、無事、仮通行証バッジとスキルのかけらをもらったカルマ。 バッジを胸に付けた瞬間、全身がまばゆい光に包まれた。 あまりの眩しさで目を閉じた。 しばらく体 ...

続きを見る

序章6~彫金に導かれし者

第10話 ジュエリルリング 一羽の鷹が、森のパヴェ回廊を南に向かって飛んでいた。 それは、ダリだった。 クマになったカルマを背中に乗せて、颯爽と空を飛んでいたのだ。 ダリ 「ジュエリルリングとは、ジュ ...

続きを見る

序章7~彫金に導かれし者

第13話 それぞれの思い 森の中に、ぽつんと丸い湖を見つけた。 湖の真ん中の中島からは、煙が上っているのがみえる。 ダリの背中に乗ったクマのカルマは、ガウディの丸太小屋の前に降り立った。 ちょうど脇の ...

続きを見る

序章8~彫金に導かれし者

第15話 いざ、企画スタートへ! ガウディのスキルの御珠が2つ出揃い、ガウディとダリの協力で、遂に企画が出来上がったのだった。 カルマたちは、プランハーツに戻り、無事に審査も通過して、販売までこぎつけ ...

続きを見る

序章9~彫金に導かれし者

第16話 オークション 舞台を丸く囲むように階段状の席が並び、その席を埋め尽くさんばかりの人たちが、中心の舞台を注目していた。 会場は異様な熱気に包まれている。 会場のあちこちから大声が上がっていた。 ...

続きを見る

 

Copyright© 手作りアクセサリーの作り方が身につく彫金世界・ジュエリルワールド , 2019 All Rights Reserved.