第一章7 スキルマスターへの道

第10話 若かれし頃の記憶

ここは賑やかな城下町。
肩に黒猫を乗せた若者が、兵士の後ろをついて歩いていた。

レオナルド
「いや~すごいな、ここがお前の生まれ故郷か!」

ガウディ
「シッ!ダメだよ、ここでしゃべっちゃ!」

レオナルド
「わかってるよ。ニャ〜ゴ」

「それにしても、難破して全滅したと思っていた兵団の一人が、
5年ぶりにひょっこり帰ってきたんだから、皆驚くよな。」

「王も直々に会いたいって言ってるわけだし、
願いを聞いてくれるかもな?」

ガウディ
「シッ!」

兵士は振り向くと、

兵士
「さあ、ガウディさま、着きましたぞ。」

目の前には城壁に囲まれた、立派なお城が建っていた。

レオナルドがガウディの耳元でささやいた。

「オレはちょっとこの城下町でも散歩してくるよ。ニャ~ゴ」

レオナルドは、肩からひょいっと降りると、人混みの中に消えていった。

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ナリト
『ガウディさん若っ!レオナルドは変わってないね。』

レオナルド
『猫だからな。』

ダリ
『やはり、丸太小屋で話した若者の話ってあなたのことでしたか。』

ガウディ
『そうじゃ』

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城内の廊下を歩いていると、
前から鎧で身を固めた兵士が歩いてくる。

鎧を着た兵士
「おまえがガウディか。」

ガウディ
「ええ、そうです。」

鎧を着た兵士
「よく帰ってきた。」

「おっと、これじゃわからんな、すまない。」

兜を取ると、ガウディと同じ年くらいの若者だった。

ガウディ
「もしや、フィガロ王子ですか!?
「気が付きませんで申し訳ありません。」

フィガロ
「いや、かまわんさ。」

「おまえは本当に運の良いやつだな。」

「もしオレがあの兵団の指揮をとっていたら、
魚のご馳走になっていたかもな、ハッハッハッハ」

とその時、奥の扉が開き、

側近
「国王様がお呼びであらせられるぞ」

ガウディ
「あっ、はい!」

フィガロ
「オレもこれから訓練だ。
よかったらあとでおまえの冒険談でも聞かせてくれ。」

ガウディ
「はい、かしこまりました。」

 

第11話 交渉

ここはきらびやかな玉座の間。

国王
「お~う、ガウディとやら、ご苦労じゃったな。」

「おまえが帰還してきたおかげで、兵士の士気が高まったわい、
なにか褒美をとらす、なんでも構わんぞ、言うてみい。」

ガウディ
「どうか、この国の薬を少しばかり分けていただきたいのです。」

「じつは私の妻が、流行り病に侵されてしまいました。」

国王
「そうじゃったか、それは気の毒にのう。」

ガウディ
「これは私が今住んでいる土地の者が作った代物です。どうかお納めください。」

光り輝く宝石が散りばめられたアクセサリーを受け取ると、

国王
「ほお~素晴らしい!!これは見事なアクセサリーじゃ。」
「こんな技術を持った国があったとはな。」

ガウディ
「国というそんな大それたところではございません。」
「ある種族が作り上げたものです。」

国王
「ほう、それは興味深い種族だな。」

ガウディ
「それで国王さま、薬の方は分けていただけるのでしょうか?」

国王
「そうじゃな、1つ条件がある。」
「その種族とやらの技術が気に入った。」

「どうだ、薬を分ける代わりに、
ワシの国にその技術を分けてくれないか?」

ガウディ
「いくら国王の頼みでも、そ、それは・・・出来ません。」

国王
「どうしてじゃ」

ガウディ
「この私一人の一存では、・・・決められません。」

国王
「おまえの妻は、病に侵されて今日で何日だ?」

ガウディ
「エッ!?よ、4日です。」

国王
「そんな悠長なことは言ってられんだろ。」
「3日後には死ぬかも知れんぞ!」

「あの流行り病はな、発症後7日間で全身に悪い気が回り、下手すれば死んでしまうこともあるんだ。」
「一刻も早く薬をもって帰らんと助かるものも助からんぞ。」

ガウディは考え込んでいる。

国王
「どうするんじゃ?」
「自分の妻を見殺しにしてしまうのか?」

ガウディ
「・・・わかりました。」
「アクセサリーの技術は私がなんとかします。」

国王
「おいおい、なんとかするって、どうするのだ?」
「そんな曖昧な答えじゃ、ワシは納得せんぞ。」

ガウディ
「じつはこの種族が住んでいる島には、あのようなアクセサリーを作り出せる技術が眠る世界に通ずる" 入り口 "があるのです。」

国王
「ほう」

「その技術をスキルのかけらと言うのですが、
そのかけらを私が見つけ出して、
国王さまに教えるというのはどうでしょうか?」

「スキルのかけらが眠る世界か・・・」

国王は少し考えていたが、
ガウディの顔を見ると、ニンマリと笑顔となり、

国王
「よかろう!お前をその世界の調査隊の隊長に任命しよう!」
「交渉成立じゃ。薬を分けるとしよう。」

ガウディ
「ありがとうございます!」

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ガウディが出ていった玉座の間

国王
「だれかおるか!」

側近
「はい、国王さま」

国王
「フィガロにすぐに出兵の準備を整えておくように伝えておくのだ!」

側近
「はい、かしこまりました。」

側近はすぐさま、玉座の間を出ていった。

国王
「さあて、ガウディの言っていることが本当ならば、
アクセサリーの技術以上のものが手に入りそうだ。」

「この国の繁栄のためにも、
自国の領土をなんとしてでも増やさねばならないからな。」

 

第12話 ドリームハーフの夜

ドリームハーフに帰ってきたガウディは、すぐに妻に薬を飲ませてあげた。
次第に熱が下がり出し、顔色も良くなっていった。

ガウディの持ってきた薬によって、病は治ったようだ。

その夜

黄色い袈裟のような着物を羽織った白髪の長い髭を蓄えた老人とガウディが
村の外れにある寺院のような建物の中で喋っていた。

族長
「いくら、義理の息子となったおまえの頼みでも、それだけはできん。」

ガウディ
「でも、こうやって、国王からもらった薬のおかげで、
ソレイユを助けることが出来たのですよ!」

族長
「しかしな、スキルのかけらを外部の人間に渡すことなどあってはならんことなのだ。」
「先祖から受け継いできたこの世界の秩序は何としてでも守らねばならない。」

ガウディ
「スキルのかけらはそんなに大事なものなんですか!」

族長
「スキルのかけらはな、カルマレイ族そのものだ。」

「カルマレイ族がなぜ、ジュエリルワールドでスキルのかけらを見つけているのか、この世界がなぜ出来たのか、おまえには、まだその理由を教えていなかったな。」

「知っておくべき時かも知れんな。」

そこへ血相を変えてレオナルドが飛び込んできた。

レオナルド
「大変だ~!!」

族長
「どうしたんじゃ!?」

レオナルド
「ハアッハアッ、兵士たちがやってきて、ハアッ、村がっ!」

族長
「なんじゃと!!」

ガウディ
「ソレイユ!」

ガウディは外へ飛び出していった。
逃げ惑うカルマレイ族たちが、次々と寺院の方へとやってくる。

寺院の門前でガウディは逃げてくるカルマレイ族に声をかける。

ガウディ
「ソレイユを見かけませんでしたか?」

カルマレイ族の男A
「す、すまん。突然だったんで・・わからない。」

カルマレイ族の男B
「もうそこまで、兵士たちがきているぞ!!」

ガウディ
「さあ、早く、寺院の中へ!!」

カルマレイ族が、寺院のある門を次々とくぐっていく。

カルマレイ族の男C
「逃げてきたものは、これで最後です!」

族長
「ソレイユはどうしたんじゃ!」

ガウディ
「私が出たらこの門を閉めてくれ!」
「レオナルド、族長のこと、頼んだぞ!」

そう言うと、
ガウディは村の方へと駆けて行った。

レオナルド
「わかった!」

 

第13話 長い夜の終わり

フィガロと数人の兵士、
そして、手を縛られた女性が歩いていた。

女性
「どうしてこんなことをするのです!」

フィガロ
「国王の命令でな。」

「女性に手荒なマネはしたくない。」
「スキルのかけらが眠る世界の入り口はどこだ?」

女性
「あなた方はどうしてそれを知っているのですか!?」

フィガロ
「家族思いの男が、喋ってくれたのさ。」

女性
「ガウディですか!?」

フィガロ
「そうか、おまえがガウディの」

そこへ一人の兵士が伝令を伝えに戻ってきた。
フィガロの耳元でささやくと、

「どうやらキミの一族たちは、あの寺院に向かっているようだな。」

フィガロは女の顔を見つめていた。

フィガロ
「なるほど。寺院がビンゴってことか。」

女性
「どうせ、入り口を見つけたところで、入ることはできないわ。」

フィガロ
「なぜだ?」

女性
「あなた方は、カルマレイ族じゃないからです。」

「ソレイユ!!」

ガウディがフィガロたちの前に現れた。

フィガロ
「ちょうどいいところに来たな、
カルマレイ族じゃない者に聞けば、話は早い。」

ガウディ
「ソレイユを離せ!」

フィガロ
「普通の人間であるおまえが、なぜその世界に行けるのか答えろ!」

ガウディ
「なぜ、そんなことを聞く?」

フィガロ
「国王の命令だからだ。」

ガウディ
「約束と違うじゃないか!なぜ、お前たちが来たんだ!」

フィガロ
「さあな、あの人は強欲の塊だ。」
「まどろっこしいことは嫌いなんだろ。欲しいものはすぐに手に入れたい性分だからな。」

ガウディは、足元に落ちていた木の棒を拾い上げ、構えた。
剣を抜こうと身構えようとした兵士に向かって、

フィガロ
「おまえらは手出しするな」

フィガロはゆっくりと剣を抜いた。

フィガロ
「そう生き急ぐな。」

ガウディ
「ここの人たちに助けてもらった命だ!ここで落としても悔いはない!」

ソレイユ
「やめて、ガウディ!!」

ガウディは襲いかかるが、フィガロは軽くかわし、ガウディの腕を切りつけた。

ガウディ
「うあっ!」

それでもガウディは、ダラリと片腕を落としながらも、もの片方の手で棒を握りしめ、身構えている。

フィガロ
「まだやるのか。」

互いがぶつかり合い、死闘を繰り広げるが、最後には足を切りつけられてしまった。
地面に倒れ込んだガウディに駆け寄るソレイユ。

フィガロ
「さあ、もういいだろう。世界への入り方を教えるんだ。」

二人の顔に剣を突き立てるフィガロ。
ボロボロになったガウディを抱きかかえるソレイユ。

呼吸も荒く、痛みにもがきながら、

ガウディ
「分かったから・・・少しソレイユと話させてくれ・・・うぅっ・・お願いだ。」

フィガロ
「いいだろう。少しだけ待ってやろう。」

二人の前から離れ、そして剣をおさめた。

ガウディはソレイユにささやいた。

ガウディ
「すまない。オレの身勝手な行動で、みんなを巻き込んでしまった。」

ソレイユ
「いいのよ。」

ガウディ
「おまえのジュエリルは、空を飛ぶことができる。」
「オレが隙きを作るから、なんとか皆のところまで逃げてくれ。」

二人は見つめ合った。

ガウディ
「愛しているよ。」

ソレイユは涙を浮かべ、ゆっくりと頷いた。

フィガロ
「さあ、時間だ。教えてもらおうか。」

フィガロがガウディたちへと近づくやいなや、

ガウディ
「わあ~」

ガウディはフィガロの胴にしがみついた。

フィガロ
「無駄なあがきを」

振りほどこうと、何度もガウディの背中を剣の柄で叩くフィガロ。

ガウディ
「さあ、早く!ソレイユ!!」

ソレイユの体が光り輝き、宙に浮いた。

そして、体がどんどんと小さくなり、カタチが変わっていく。

フィガロ
「なんだこれは!?」

フィガロと兵士たちは、その光景に驚いて動きが止まった。

ガウディ
「今だ!逃げろ!!」

真っ赤な龍のジュエリルとなったソレイユ。

しかし、ソレイユはその場から飛び立とうとしなかった。

ガウディ
「おいっ!どうした!?早く!!」

ソレイユ
「私はあなたの妻よ。どんな時でもあなたと一緒だわ。」

ガウディ
「ソレイユ」

荒い息づかいのままその場に崩れ落ちるガウディ
そして、呆然と立ち尽くすフィガロ

ソレイユ
「これが私たちの秘密よ。」

「ジュエリルワールドに入るためには、このジュエリルの姿にならないと入れないの。」

「普通の人間では、決して入れないのよ!」

「でも1つだけ、入れる方法があるの。」

「それは、カルマレイ族が生み出したジュエリルリングを持つこと。」

「でもそのためには、リングを作り出すための作り方と材料が必要なの。」

「材料の一部は、その世界でしか採れない」

「そして、作り方は私だけが知っている!」

「もしガウディを殺すのならば、私もこの場で死ぬわ。」

「その世界に入りたければ、私たちを生かしなさい!」

その時だ!

寺院の方角がまばゆく輝いた。

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寺院の門も破られ、寺院の中に兵士たちが入ってくるのも時間の問題だった。
カルマレイ族たちは、寺院の裏手にある命の祭壇の前に、身を寄せ合い集まっていた。

レオナルド
「もうそこまで兵士たちが来ていますよ!」

族長
「やむを得んか。」

族長は祭壇の前に立つと、

族長
「このままここでこうしていても、いずれは皆捕まってしまうだろう。」
「もう私たちに残された選択はこれしかない。」

「皆の者、いいか、よく聞け!」

「これから私たちは、このドリームハーフの地を棄てて、ジュエリルワールドへと向かうことにする。」

族長はレオナルドに話しかける。

族長
「レオナルドよ、おまえはどうする?」

レオナルド
「私はガウディたちを持っています。」

族長
「わかった。後のことは頼んだぞ。」

「さあ、皆の者、目を閉じるのだ!!」

兵士たちが寺院の裏手に通ずる扉を破ったその時だった。

兵士たち
「なんだ、これは!!」

兵士たちが目にしたものは、
カルマレイ族がまばゆく光輝き、次々と龍へと変身していく光景だった。

命の祭壇の下には、空間の歪みからなる大きな渦が出来あがっていた。

兵士たちが呆然と立ちすくむ中、
龍たちは、その渦の中へと消えていった。

最後に残った黄色い龍のジュエリルが、村の方角を見やりながら

族長
「二人とも無事でいてくれ。」

そうつぶやくと、渦の中へと消え、やがて渦は閉じてなくなってしまったのだった。

 

第14話 出発の時

牢獄に囚われている一人の男。

「ガウディ、ガウディ、聞こえるか!?」

牢壁の鉄格子の向こう側から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

ガウディ
「レオナルドか!無事だったか。」

レオナルド
「ああ。カルマレイ族もお前たち以外は、ジュエリルワールドへ逃げ延びたよ。」

ガウディ
「そうか。よかった・・・ソレイユは無事か?」

レオナルド
「ああ。城の一室に閉じ込められているけどな。」
「これから、どうなるんだろうな」

ガウディ
「さあな。」

看守
「誰と喋っている!!」

レオナルド
「ミャ~ゴ」

看守
「猫か。おまえも、いよいよ気が触れてきたか。」

「さあ、出ろ!」

牢獄の扉が開いた。

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玉座の間に通された。

国王
「さて、おまえを約束通り、調査隊の隊長にする。
スキルのかけらが眠る世界へ赴き、かけらを探し出し、その世界を隈無く調査してくるのだ。」

ガウディ
「ソレイユに会わせてくれ。」

国王
「今はできんな。」

ガウディ
「どうしてだ!」

国王
「やることをやってもらったら会わせてやる。」

「ワシはお前に薬を与え、妻を助けてやったのだぞ。」
「今度はお前が約束を果たす番ではないのか?」

「お前の妻も大人しく言う事を聞いて働いてくれているんだ。」

「フィガロにジュエリルワールドの話は聞いておる。」
「もうすぐジュエリルリングも完成する頃だろう。」

「そうそう、調査隊にはな、フィガロを護衛につけさせよう。」

「腕っぷしはおまえが一番よく知っておろう。」

「役に立つだろうよ、おまえが向こうで変なマネなどしたときにな、ガッハッハッハッハ」

そこへ、側近がやってきて、国王の耳元でささやいた

国王
「おお、そうか!」

「さあ、出来たようじゃ。」

「フィガロは、数名のお供を連れて行くじゃろう。」

「お前も、一人だけ連れて行くことを許してやろう。」

「出発は3日後だ。」

「それまでに見つけておくがいい。」

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命の祭壇に立つガウディたち。
調査隊としてジュエリルワールドに向かう、ガウディと、フィガロ、そして数名の兵士。
そして、その他の兵士たちに囲まれるように、ソレイユもそこにいた。

ソレイユは調査隊の前に立つと、

ソレイユ
「ガウディ、父たちに会ったら伝えて。
必ずそちらに向かうからと。」

「レオちゃん、ガウディを頼むわよ。」

レオナルド
「ニャ~ゴ」

レオナルドはウインクした。

フィガロ
「さあ、いくとしよう。」

ガウディ
「ああ。さあ、出発だ!」

皆、目をつぶった。すると、全身が光り輝き、ジュエリルとなっていく。

ソレイユも目を閉じて念じた。
すると、命の祭壇の下に渦が出来始めた。

ソレイユ
「懐かしいわ。」
「スキルのかけらを探しに行くあなたをこうやってよく見送っていたわよね。」

ガウディ
「そうだったな」

ソレイユ
「無事に帰ってきてね、二人で待っているから。」

渦が大きくなり、
フィガロ、そして兵士たちが次々と吸い込まれていく。

ガウディ
「二人って!?」

ソレイユ
「あなたはね・・・父親になったのよ」

ガウディ
「!?」

ガウディは渦の中へと吸い込まれていくのだった。

 

第15話 残されたもの

ガウディたちがジュエリルワールドの調査に向かってから、
あれから7年の月日が流れたある日のこと。

ベッドで一人の男の子がスヤスヤと眠っている。
その傍らには、ソレイユがいた。

ソレイユ
「もう覚醒してもいい頃なんだけどな。人間であるお父さんの血も受け継いでいるのね。」

カルマレイの子どもは、
6~7歳を迎える頃には、ジュエリルへと変身できるようになっている。

しかし、普通の人間であるガウディの血も受け継いだこの子どもは、まだ変身できないようなのだ。

男の子
「う~ん」

ソレイユ
「あら、起こしちゃったのね。ごめんね。」

目をこすりながら、ベッドから起き上がった。

ソレイユ
「今日は あなたの7歳の誕生日ね。」

「レイには、この指輪をプレゼントしなきゃね。」

ソレイユはジュエリルリングをレイに見せた。

レイ
「これをボクにくれるの!?」

ソレイユ
「そうよ。そろそろカルマレイとしての能力を扱えるよう、これで練習しなくちゃね。」

レイ
「やった~!やった~!」

ソレイユ
「さあさあ、その前にちゃんと顔を洗って着替えないとダメよ。」

レイは大きく頷くと、ベッドから颯爽と起き上がり、洗面所に走っていった。

ソレイユはカーテンを開けた。

窓の外の遥か向こうの空に、一本の狼煙(のろし)のようなものが見えていた。

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「うわぁ~」「キャ~」

城下町に兵士たちがやってきて、家々を壊し、火が放たれ、逃げ惑う人々は次々と捕らわれていくのだった。

もう町は、一面火の海と化していた。

側近
「国王陛下!もう町は壊滅状態です。
このままでは、この城にやって来るのも時間の問題かと!!」

国王
「うぬぬ!?兵士を集めて迎え撃つ準備をしろ!」

側近
「はっ!!」

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地下には一本の廊下を挟むようにして牢屋が並んでいる。

その一番向こう側に1つの扉があった。

壁の隅から、その扉を覗き込むソレイユがいた。

ソレイユ
「門番もいったようね。」

ソレイユはその扉に入っていった。

薄暗いその部屋は、なにかの作業場のようだった。

そしてそこには、ズラリとジュエリルリングが並べられていた。

ソレイユ
「溶かせる時間はないわね。」

ソレイユは、その場に転がっていたハンマーを拾い上げ、

ソレイユ
「こんなものが世の中に広まってはいけないわ。」

次々と指輪をハンマーで叩き潰していった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

怒声やうめき声や逃げ惑う声があちこちから聞こえ、
金属がぶつかり合う音と、甲冑の擦れる音が入り乱れている。

大勢の足音が、だんだんとこちらに近づいてくる。

「レイ!!どこなの!!レイ~!」

ベッドの下からは、シクシクとすすり泣く声が聞こえていた。

自分の名前を呼ぶ声が近づいてくる。

「レイ!!しっかりしなさい!」

顔を上げると、目の前にはソレイユの姿があった。

ソレイユ
「はやく、これを付けて逃げるのよ!!」

ソレイユはレイの指に指輪をはめさせた。

ソレイユ
「目をつぶって念じるのよ。鷹になれって!!」

「さあ、早く!!」

レイはギュッと目をつぶった。

兵士
「この近くに逃げたはずだ~、探せ~!」

レイは目を開けて、ソレイユにしがみついた。

レイ
「怖いよ~」

ソレイユ
「レイ、大丈夫、落ち着いて。目を閉じて念じて!」

レイはもう一度、目を閉じた。
すると、体が光り輝き、鷹のジュエリルとなっていったのだ。

兵士
「いたぞ!あそこだ~!!」

兵士たちが扉の入り口に現れた。

ソレイユ
「!!」

次の瞬間、ソレイユは鷹のジュエリルとなったレイを掴んだかと思うと、
窓の外へ放り投げた。

レイ
「うわあ~」

空に飛ばされたレイの視界に飛び込んできたものは、
光輝いた赤い龍のジュエリルが、まさに空に飛び立とうとした瞬間だった。

その赤い龍は、兵士の剣によって切り落とされてしまったのだ。

レイはその時、母の声が聞こえたように感じた。

『レイ、逃げて!愛してるわ。』

赤い龍のジュエリルは、城の外へ真っ逆さまに落ちていった。

レイ
「ママ~~!!」

レイはただただひたすらに、城から逃れるように無我夢中で飛び続けていた。
涙が止まらず前は見えない。

突然、ガツンと目の前が真っ暗になった。

大木にぶつかったレイは、地面に叩きつけられ、草むらに転がり落ちたのだった。

そのまま動かなかった。

城の方角からは、煙が立ち登っていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

どのくらいたったのだろうか。

薄暗い森はシーンと静まり返っていた。

しばらくすると、森の奥から誰かがやってくる足音が聞こえてきた。

その者は立ち止まったかと思うと、動かなくなった鷹のジュエリルを拾い上げた。

それは、ボロボロの少女” アリス ”の姿である。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

崩れ落ちた城跡。
ガウディとレオナルドが瓦礫の中に立っていた。

ガウディは、瓦礫の間に何か光るものを見つけた。

それはボロボロになった赤い龍のアクセサリーだった。

「・・・ソレイユ」

もう動かないジュエリルを握りしめたガウディは、その場で泣き崩れるのだった。

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黄色い龍
『どうやら、ガウディ、おまえが身に付けているソレイユの記憶と、その若者ダリの記憶がリンクしたようだな。』

レオナルド
『もうダリではないだろう。』

黄色い龍
『ああ、そうだな。
我の娘、カルマレイ族であるソレイユとガウディの間に生まれた子、” レイ ”だな。 』

ガウディ
『そなたがソレイユの・・・』

レイ
『すいません。まだ自分の中で整理が・・・。』

黄色い龍
『無理もない。記憶喪失だったおまえがこの空間に入ったことで、自身の記憶を無理矢理に呼び覚ましたようなものだからな。』

『少しずつ受け入れていけばよい。』

『おまえもだ。ガウディよ。』

ガウディ
『ええ。』

黄色い龍
『レイ、ユフィリー、そしてナリトよ、そろそろジュエリルワールドに着くぞ。』

 

To Be Continued...

第一章のストーリーはここでおしまいとなります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。