第1章2 スキルマスターへの道

第2話 フィガロの想い

ここは、プランハーツにあるフィガロの邸宅。

ダリ
「どうしてですか?父さん!!」
「私は純粋にジュエリルリングの作り方を実際にこの目で見たかっただけなんです。」
「なぜ、会ってはダメなんでしょうか!」

フィガロ
「どうしてもだ!」
「あのナリトという者に、貴重な粉を分けたんだ、それでいいだろう。」

ダリ
「私の幼い頃と、なにか関係があるのでしょうか?」

「私はアリスと一緒にあなたに育ててもらいました。」
「そのご恩は一生忘れません。」

「しかし、本当のことが知りたいのです。」

「私が何者で、どこで生まれ、幼い頃に誰に育てられたのかを!」

フィガロ
「それはオレにも知らんことだ。」
「おれを困らせんでくれ!」

ダリ
「私はガウディがつけていたあの壊れたペンダントトップを、昔にどこかで見たことがあるようなのです。」

フィガロは黙り込んだ。

しばらく黙っていたがようやく口を開いた。

フィガロ
「あやつとは昔、ジュエリルワールド調査隊として、一緒に旅したってことは話したよな。」

ダリ
「ええ」

フィガロ
「そして、調査も一段落して、国に帰ることになったんだ。」
「でも、その国はもうオレの帰る場所ではなくなってしまった。」

「なぜなら、あの人の国は、滅ぼされてしまったんだよ。」
「オレは一転して、国王の血筋の生き残りとして、追われる身になってしまった。」

「そんな時に、アイツに出会ったんだ。」

ダリ
「あいつって?」

フィガロ
「アリスだよ。」

「ボロボロの服を来て、街を彷徨っていたんだ。」
「食うものも ろくに食っていなかったらしく、いつ野垂れ死んでもおかしくない状態だった」

フィガロは天を見上げた。

「ちょうどオレがアリスと同じ年の頃、母は突然、病に倒れ、あっという間にこの世からいなくなった。」

「この国のたった一人の後継者となったオレは、厳しく育てられた。」

「あの人は何をやっても、オレを認めてはくれなかった。」

「逆に怒鳴られてばかりいた。」

「だんだんとオレはあの人と距離をおくようになり、一刻も早くもっと強い自分を手に入れたいと願うようになった。」

「あの人などいなくとも、自由に一人でも生きていける力を手に入れてやるとね。」

「調査隊に志願したのも、そのためだ。」

「ところがいざ国に帰ってきてみるとどうだ?国もあの人もこの世から無くなっていた。」

「望み通りオレは自由になったんだよ!」

「嬉しさがこみ上げてくるはずだった・・・」

「なのに・・・なんの感情も沸き起こらなかったよ。」

「訳がわからない。」

フィガロは椅子にもたれかかり、うなだれている。

「いや、一つだけ分かったものがあった。」

「オレは結局自立していない、あの人の背中をずっと追いかけていたんだとな。」

「こんな半端者がこれからどうすりゃいいんだ。」

「このまま捕まろうが、野垂れ死のうが、もうどうでもよかった。」

「オレは道端に座り込んでボー然としていたんだ。」

「そこへフラフラになりながらも、オレに近づいてくるヤツがいた。」

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アリス
『おじちゃん、一人になっちゃったの?』

フィガロ
『そう見えるかい・・』

アリス
『うん、私とおんなじだね。』

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全身ボロボロで、顔はうす汚れ、長い髪がぐしゃぐしゃの骨と皮だけの、か細いアリスがオレの目の前に立っていた。

フィガロ
「あいつはやつれた顔で一生懸命笑いやがるんだ。」

フィガロの頬から涙がこぼれていた。

「母が死んだ時すら泣かなかったのにな。」

「オレはあいつを抱きしめながら、その場で泣き崩れていたのさ。」

「そして、その時に誓ったんだよ。もうこれ以上寂しい思いはさせてはいけないとね。」

「アリスも、そしてオレ自身も、新しく生まれ変わるんだと!」

 

第3話 決意

フィガロ
「アリスを引き取ってまもなくしたある日のこと」
「おまえはな、アリスと手を繋いで、突然オレの前に現れたんだよ。」

「しかし、おまえはなにも覚えていなかった。」
「記憶喪失だったんだよ。」

「ダリって名前もアリスが付けたんだ。」
「” 私のおムコさんになる人の名前だよ ”って言ってな。」

「その日からおまえはダリとなったんだ。」

ダリの脳裏で誰かが自分を呼んでいる。

だんだんと視界が暗くなっていく。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

自分の名前を呼ぶ声が近づいてくる。

「◯◯!!しっかりしなさい!」

確かに誰かが私に向かって叫んでいるようだ。

「はやく、これを付けて逃げるのよ!!」

「目をつぶって念じるの、鷹になれって!!」

「さあ、早く!!」

そして、突然目の前がパアッとまばゆく光り輝いた。

「この近くに逃げたはずだ~、探せ~!」

視界に飛び込んできたものは、光輝いた赤い龍のジュエリルがまさに空に飛び立とうとした瞬間、兵士によって剣で切り落とされた光景だった。

まっさかさまに落ちていく赤い龍のジュエリル。

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我に返った。

ダリ
「ハァハァハァハァ」

フィガロ
「どうかしたか?」

ダリ
「ううん、なんでもない。続けてくれ」

フィガロ
「おまえはな、動かない鷹のジュエリルとして、アリスがずっと持っていたんだ。」

「どうやらオレと出会う前に、おまえをどこかで拾ったらしい。」

「肌身離さず、ずっと隠し持っていたんだよ。」

「アリスはその頃よく、自分の見た夢をオレに話してくれた。」

「鳥のアクセサリーが、自分と同じ年くらいの少年に変身する夢をね。」

「そして、その少年と結婚するんだとさ。」

「しかし、その少年は大人になると、今度は蛇のような生き物となって、自分を殺してしまうんだとさ。」

「子供が見る空想世界の夢はどこまで本当なのか怖くなっちまうな。」

「実際におまえを連れて来たのだからな。」

フィガロは大きくため息をつき、微笑んだように見えた。

「話が少し脱線してしまったかな。」

そして、なにかを決意した面持ちへと変わり、

「ダリよ。」

「いつかこの日が来ることは分かっていた。」

「しかし、いざ、目の前にそれがやってくると、なかなか受け入れられないものだな。」

「これが、子供を巣立たせる親の心境ってヤツなのだろうな。」

「これから先、どんなことになろうが、オレはすべてを受け入れる。」

「だから、おまえは、自分が何者であるか、確かめてくるがいい。」

「自由に大空を羽ばたいてこい!!」

「ガウディには、オレから話をつけておく。」

「これは、おまえが持っていろ!」

そういうとフィガロは龍のジュエリルとなり、潰れた片目の中から真っ赤な宝石のかけらを取り出し、ダリに渡した。

「鳳凰ルビーだ」

鳳凰ルビーを握り締めたダリは、意識の中にスーっとなにかが溶け込んでくるのを感じた。

「お前も地金の領域に入る時が来たようだな。」

地金の材料と工具についての知識が刻まれた叡智である。

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