序章0~彫金に導かれし者

第0話 不思議な教本!?


『逸材にはなれそうかな?』

「どうでしょうね?」

『彫金の知識と技術は、覚えることが山ほどあるからね。』
『ついてこれるかな?』

「僕たち次第ってこと?」

『いや、それは本人次第さ。』
『私たちは面白さのきっかけを伝えてあげればそれでいい。』

『きっかけは誰にでも平等だが、その後の成長曲線は、そこにどれだけのエネルギーを傾けられるかによって変わってくるからな。』

「どのくらい覚悟があるかってことね。」

『その傾ける熱量は自身が決めること。』
『周りがとやかく言うことじゃない。』
『まあ、とにかく私たちは導いていくだけなのさ。』
『結果はどうであれ、少しでも何か、あっ!』
『そういえば・・・パスワードは伝えているよね。』

「?・・!あっ~忘れてた~!!教えなきゃ!」

『やれやれ。こんなんじゃ、スキルマスターは程遠いな。』

この先を読むためには、こちらのURLから設定をおこなってください。

パスワードは、『******』
KARMAREYの書はこちら
https://*******

この書のはじまりには、こんなやりとりが綴られていた。

そして、ここから先はパスワードでロックされていて、読むことが出来ないようになっている。

『パスワードは!?載ってないじゃんか』

ネットを眺めていたら、たまたま目に止まった電子書籍のタイトル。

「手作りアクセサリーの作り方が身につく彫金世界~ジュエリルワールド KARMAREYの書」

タイトルが気になったので、ダウンロードしてみたはいいが、この先が読めないのだ。

『なんだよこれ!意味わかんないんだけど』

とその時、車内にアナウンスの声が響いた。

急いでスマホの画面を閉じて、電車を降りる準備をした。

ボクの名前は、勝間 業人(カツマ ナリト)

小さい頃のボクは外では砂遊び、室内では粘土いじりをよくしていた。

その経験が役に立ったかどうかはわからないが、今ボクは彫刻学科の美大生だ。

砂や土を卒業して、今は木や石いじりをしているというわけだ。

最近では金属いじりに興味を持ち、彫金について色々と情報を集めている。

昼間は大学の授業、夕方から夜にかけてアルバイト、そのあとに授業で出された課題の彫刻を彫るというのが、最近のボクの日課である。

「あ~明日までだったな~課題、また徹夜か~」
「よ~し今日もまた、”あれ”で乗り切るしかないか。」

いつものコンビニに立ち寄ったナリトは、いつものコースを辿り、冷蔵庫から缶チューハイとエナジードリンク、レジ前に立つと、横のショーケースを指差し、いつもの注文をした。

「唐丸くん1つ」

自宅のマンションに着いたナリトは、郵便ポストからはみ出しているチラシを抜き取った。

すると「ゴロロンッ」とポストの中でなにかが転がり落ちる音がした。

ポストの中を覗き込むと、奥の方になにやら小さな小包が転がっている。

チラシを抜き取った拍子にこの小包が転がり落ちた音だったようだ。

ナリトはポストの扉を開け、小包を取り出した。

「なにこれ?」

そう言いながらコンビニ袋に小包を放り込んだ。

玄関のドアを開け、中に入るとナリトはポケットからスマホを抜き取り、コンビニ袋と一緒にテーブルに置く。

そして、「ハア~今日も疲れた~」と雪崩れ込むようにソファーに倒れ込んだ。

「フゥ~」と一息ついて座り直すと、コンビニ袋から缶チューハイを取り出す。

「プシューッ」

チューハイをぐびぐびと呑みながら、おもむろにコンビニ袋から小包を取り出す。

差出人を見てみると、KARMAREYと書いてある。

「かーまりぃ?・・・・これってたしか」

あの電子書籍にあったタイトルの名前と同じだ。

手のひらにすっぽりと収まる小さな小包。

「パスワードかな?これ」

大きさのわりにはやたらと重厚感がある。

小包を破いていくと、なにやらプチプチにくるまれた物体が顔を出した。

さらにそのプチプチを破ってみると、

「なにこれ?」

なんとそれは、金属でできた立体型のクマが出てきたのだ。

ナリトはそのクマの物体を手に取った。
大きさは人差し指の半分くらいだろうか。

「・・・どう見ても違うよな」

クマの物体をくまなく見ていくナリト。

「おっ!すごっ!」

クマの腕が動かせた。

腕以外にも頭や足も動かせられる。

「よくできてるな。」

ずんぐりむっくりした愛嬌のあるカタチだった。

ナリトはそのクマの物体をテーブルに立たせようと試るが、頭が重いせいかすぐに倒れてしまう。

頭をつまみ、バランスをとって置こうとするが、すぐまた倒れてしまう。

もう一度クマの頭を摘み立たせているとき、突然、
「カッコウ、カッコウ、カッコウ・・・・」
と、時刻を知らせる時の音が鳴り始める。

一瞬ビクッとしたが、そのまま立たせようと試る。

カッコウの音は続いている。

「19・・20・・21・・22」
カッコウの鳴き音に合わせてナリトは数字を口ずさみながら、クマを立たせようと集中している。

「・・23」
カッコウの鳴く音が止んだ。

ナリトの動作も止まった。
そっと指を離すとクマがテーブルに立った。

慎重にソファーから立ち上がると、
「こんなことやってる場合じゃなかったよ。もうこんな時間だ!」

時計の短針が11時を指していた。

ナリトは、急いで課題の準備に取り掛かる。

クマはテーブルに立っている・・・

かと思いきや、
だんだんと頭がもたげていき遂に倒れるって時に、
偶然にも両腕が前習えのような形となり、
そのまま四つん這いの形で静止したのだった。

真っ暗闇

ナリトの意識に語りかけてくる声が聞こえてくる。

声と共にカッコウの鳴き声も聞こえる。

” スキルのかけら ”を探し出せ!
そして彫金に関する知識と技術を習得するのだ。
この世のどこかに” ジュエリルワールド ”という、命を持ったアクセサリー” ジュエリル ”が住む世界が存在する。
その世界を旅し、新たな自分を見つけ出すのだ!
さあ、パスワードは今ここに。

カッコウの鳴く声が次第にハッキリと聞こえてくる。

ナリトはいつのまにか眠ってしまったようだ。

『いま何時なんだろう?』

カッコウがまだ鳴いている。

「コンコン・・コン・・」

耳の遠くのほうでなにかがぶつかり合う音がしている。

体はポカポカと温かく、瞼を通して外が明るくなっていることを感じる。

『もう朝か・・』

瞼が重い、もう少しこのまどろんだ心地良さを味わっていたかった。

「コン・・コン・・」

ナリトはゆっくりと目を開ける。

すると目の前には見知らぬ天井が。

ぼんやりと部屋を見渡すと何かの作業場なのだろうか、壁にたくさんの工具がかけてある。

『どこなんだろう?』

カッコウの鳴く声が止んだ。

『まだ夢の中?』

すると、ぶつかり合う音がハッキリと聞こえてきた。

その音は、すぐそばから聞こえてくる。

「コン・・コン・・」

音のする方を見ると、そこには、

スマホの上を動き回っているクマの物体がいたのだ。

ナリト
「うわあ!」

ナリトの声に驚き、そのクマの物体はその場で尻もちをついた。

クマの物体
「イタタタタ。」

クマの物体は起き上がると、ナリトのほうを向いた。

クマの物体
「お目覚めですね。」

ナリト
「エッ?なに!喋った!?」

クマの物体
「お待たせしました。」

クマの物体は、ナリトの前にトコトコと近づいてきた。

ナリト
「自動で動くの!?」

クマの物体
「そりゃ、動きますとも、だってボクは」

ナリト
「えっえっ、ちょちょっとまって、まだ夢見てる?」

クマの物体
「夢のようで夢じゃないんですよ。ここは」
「おおおっと、そうでした、まずは自己紹介しないとね。」
「オホン!え~ボクは、” くまのジュエリル ” この通り、しゃべったり、歩いたりできる命を持つアクセサリー。」
「クリエイターになりたい人のお手伝いをするのがボクのお役目なんですね。」
「うっかりパスワードを渡すの忘れてまして・・・テヘヘ。」

ナリト
「パスワード?」

クマのジュエリル
「さきほど、スマホとKARMAREYの書との連動は終わりましたので、あとはパスワードを入力すればいつでも旅が始められます。」

ナリト
「カルマレイの書と連動?えっなに、旅?どういうこと?」

何がどうなっているのかわからない。

クマのジュエリル
「ちょうど今、パスワードを入力していたんです。」

そういうと、クマのジュエリルはスマホの上を軽快に動き回った。

「コンコン・・コンコン」

その光景はまるでスマホの上でタップダンスをしているようだった。

クマのジュエリル
「 よし!これでパスワード入力もOK」

「最後にキミの名を入力すれば完了です。」

「キミのなまえは?」

ナリト
「えっ!ナ、ナリトです」

クマのジュエリル
「ボクはクマのジュエリル、名前はユフィリー!」

「これからどうぞよろしくね、ナリト!」

ナリト
「ちょっちょっと、待って!」
「一体なにがどうなってるの~!?」

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序章1~彫金に導かれし者

第1話 夢と現実の狭間 ユフィリー 「ナリトが今いる場所は、夢と現実をつなぐ島 ” ドリームハーフ ”というところです。」 「ちょうどここは、ナリトの住む現実世界とジュエリルワールドとの世界をつなぐ場 ...

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全ストーリー
手作りアクセサリーの作り方が身につく彫金世界~ジュエリルワールド

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