まずは覆輪留めの実践に入る前に、留め方の知識を覚えましょう。
ここで学んだ留め方を実際に使い、その知識を自分の感覚に刷り込んでいき、覆輪留めの精度を高めていきますよ。
カボションカットの覆輪を作る
カボションカットの種類
カボションカットとは、ドームのような半球形に研磨したカット法です。
石の側面は、大きく分けるとこのような形になっています。
底面から傾斜が始まっているカボション
底面以外の側面部分から傾斜が始まっているカボション
カボションカットの覆輪を作る時にこの2種類の形のどちらに当てはまるかで、覆輪の高さが変わってきます。
どうしてそれぞれの高さが変わってしまうのかと言うと、それは覆輪の留め方に関係してきます。
カボションカットの覆輪の構造
覆輪留めは、石に枠の先端部分を全周、石に倒して留める方法です。右上図のように石よりも枠が小さくなることで、外れなくなるのです。
しかし、枠を被せ過ぎると石が小さく見えてしまうし、(上図)
枠が被らな過ぎると石が外れてしまいます。(上図)
覆輪留めには、石を最も大きく見せつつも外れない、そんな理想の留める位置と言うものがあるのです。
カボションカットの理想的な留める位置
ポイント
石の傾斜の始まりから、石のてっぺんまでの高さを3分割します。
石の傾斜の始まりから、覆輪を倒して留めたときに※ 石の1/3のところまで掛かる高さが、石が最も大きく見えて、なおかつ外れない理想的な留める位置です。
※なぜ、「石の傾斜の始まりから、覆輪を倒して留めたときに、石の1/3のところまで掛かる高さ」なのか?
「石の傾斜の始まりから、石の1/3のところまで掛かる高さ」と何が違うのか?
それは、
単純に横から見て1/3の石の高さで覆輪の高さを決めてしまうと、覆輪と石との間隔や石の傾斜の角度によっては、石に覆輪を倒した時に留める位置が1/3以下の高さになってしまうからです。
覆輪の高さの決め方(カボション)
それでは話の冒頭に戻しますが、カボションカットの側面は大きく分けて2種類の形がありますよね。
カボションカットの理想的な留める位置の条件を、それぞれ2種類の石の側面にあてはめて考えていきます。
石の傾斜が底面から始まっているタイプのカボションの場合
覆輪の高さは、石の傾斜の始まりから覆輪を倒して留めたときに石の1/3のところまで掛かる高さとなります。
覆輪と石との間隔や傾斜の角度を考えて、倒れた時に1/3に掛かるように、覆輪の高さは若干高めにしておきます。
石の傾斜が底面からではなく、側面の途中から始まっているタイプのカボション
覆輪の高さは、石の傾斜の始まりから覆輪を倒して留めたときに石の1/3のところまで掛かる高さと、石の底面から傾斜の始まりまでの垂直になっている側面部分を足した高さとなります。
覆輪と石との間隔や傾斜の角度を考えて、倒れた時に1/3に掛かるように、覆輪の高さは若干高めにしておきます。
Question
こちらの以下の画像のカボションカットの石は底面が膨らんでいます。これらの石の場合、理想的な留める位置の覆輪はどれになるでしょうか?
Q1.AとBどちらでしょうか?
Q2.AとBとCどちらでしょうか?
ヒント
どんな形にせよ、石の傾斜の始まりから、覆輪を倒して留めたときに石の1/3のところまで掛かる高さが基準です。
答えは、ページの一番最後です。
ファセットカットの覆輪を作る
宝石の表面に角度の違うたくさんの切子面(ファセット)と呼ばれる小さな平面を幾何学的に組み合わせてカットしていく方法をファセットカットと呼びます。
より多くの角度の違う平面をもたせることで宝石に入る光を屈折させ、内側から輝いているように見せる効果があり、ダイヤモンドなど透明度の高い石に用いられるカットです。
そして、この各ファセットには名称がそれぞれ付けられています。
これからファセットカットの石留めを学んでいく上で、この各ファセットの名称で高さや留め方などの指示を出していきますので、これを機に各ファセットの名称を覚えていきましょう!
ファセットカットの理想的な留める位置
ポイント
クラウンを3分割します。
ガードル側のクラウンの傾斜の始まりから、覆輪を倒して留めたときにクラウンの1/3のところまで掛かる高さが、石が最も大きく見えて、なおかつ外れない理想的な留める位置です。
覆輪の高さの決め方(ファセット)
覆輪の高さは、クラウンの傾斜の始まりから覆輪を倒して留めたときにクラウンの1/3のところまで掛かる高さと、キューレットからガードルまでを足した高さとなります。
覆輪と石との間隔や傾斜の角度を考えて、倒れた時に1/3に掛かるよう覆輪の高さは若干高めにしておきます。
制作する時の注意
縮むことを考えて大きめに作る
ワックスで作る場合、覆輪の大きさや高さをピッタリで作ってはいけません。
なぜなら、キャストするとそのデザインはひとまわり縮んでしまうからです。
ピッタリで作ったものは高さが低くなり、理想の高さではなくなってしまったり、最悪は枠が縮んで石が入らないなんてことも。
さらに、このキャストした覆輪で、ゴム型を作って複製するとします。
その複製した覆輪はゴム型から量産するときに縮み、さらにキャストするときにも縮むことになります。
1回目のキャストで収縮 ⇒ ゴム型から量産する時に収縮 ⇒ 2回目のキャストで収縮 と、
複製した覆輪は3度縮むことになります。
ですので、あらかじめ収縮することを考えて、大きめに作っておく必要があります。
作るデザインの形や大きさや素材など色々な条件で収縮率が変わってしまうため、一概に何mm縮むとかはありません。
色々な条件のものを作っていきながら、感覚で覚えていくしかありません。
覆輪の枠の大きさの目安
【地金で覆輪を直接作る場合】
石が覆輪の内枠に触れないギリギリの大きさにすること。
【ワックスで覆輪を作る場合】
枠の中で石が少し遊ぶ程度。
【複製するための原型をワックスから作る場合】
3回収縮することを考えて大きめに枠を作ること。
覆輪をはさむリングを作るときに考えること
覆輪の大きさとリングサイズのバランスで、デザインを変えていかなければならない。
上記の右の画像の場合、デザインのバランスは良いのだが、指とリングの間に隙間が出来すぎてサイズがゆるくなってしまい機能性に問題が出てしまう。
サイズはピッタリとなったのだが、 覆輪の高さが大分必要となるデザインになるため、石を取り巻く覆輪の見た目が野暮ったい感じの印象になってしまうのだ。
覆輪の枠の大きさがリングサイズに比べて大きいものを使う場合には、無理に側面全体で挟み込もうとする必要はなく、
この画像のように、半分ほど挟み残り半分をのせたカタチにするか、リングに完全にのせるデザインにすると良いだろう。
これで機能性も問題なく、覆輪の高さも高くならず、覆輪とリングデザインのバランスも良い感じになる。
答え Q1:B Q2:C